【旅】横浜山手西洋館めぐり#01 イギリス館〈神奈川県横浜市〉
都会での忙しい毎日に疲れたら、ふらっと旅に出てリフレッシュしてみませんか?
シリーズ『町旅』は、そんなあなたを癒してくれたり、
改めて日本の魅力を再発見できる「ニッポンの旅」をご提案します。
今回からシリーズとして、外国人遺留地の面影が残る神奈川県の横浜にある、趣深い「横浜山手西洋館」を巡ります。
現在コロナ禍ということもあり、館内での撮影は禁止なのですが、
この現地取材は2016年に行われたものなので、その内部もバッチリ撮影。
見どころも写真でたっぷりお伝えしています。お楽しみに♪
まずシリーズ第1回となる今回訪れたのは、横浜市指定文化財にも指定されている『横浜市イギリス館』
住所としては、「神奈川県横浜市中区山手町115-3」に位置します。
イギリス館は、昭和12(1937)年に上海の大英工部総署の設計により、英国総領事公邸として建てられました。
鉄筋コンクリート製の2階建て、コロニアルスタイルの建物です。
広い敷地と建物の規模から、東アジアにある領事公邸の中でも上位の格付に位置づけされました。
1階入り口(エントランス)の石造りのアーチは、和風にも洋風にも感じられる独特のカーブの形状をしています。
主屋の1階は玄関、ホール、書斎、応接間、サンポーチ、食堂、配膳室、台所からなり、その中央に階段が設けられています。
こちらの写真は1階南側の応接間(客間)。
食卓にはみずみずしい果物が飾られています。
シャンパン色のアンティークなガラス皿との配色は上品で、頭上のシャンデリアの色とも共鳴していて、芸術的ですね。
1階応接間のシャンデリア。単体で撮影しても絵になるほどの美しさです。
こちらは2階の主寝室です。
今回訪れたのが、ちょうど3ヶ月間の改装工事が終わった直後(編集部注※2016年)だったので、このリニューアルされた寝室のカーテンと絨毯のま新しいところをたまたま目にすることができました。
今回新調されたこの絨毯は、それまでの無地のベージュ系の色とは対照的に、なんと赤!
ゴージャスでもあり、かといって華美すぎることもなく、全体的にエレガントでシックな印象です。
模様は英国的スタンダードを感じさせるシンプルなデザインを基調としたもので、この部屋の調度としっくりと馴染んでおり、全体との配色バランスも美しく見事です。
寝室の照明は控えめで、主張しすぎることもなく、それでいて確実に存在感が光っていました。
寝室本来の目的に沿った色合いと絞って調整された光量が、心憎いほど絶妙な加減です。
そして、この屋敷の特徴を挙げる時、欠かせないのがこちらの丸窓です。
近代に入るまでイギリスの伝統的な建築工法では長らくアーチ型が一般的でした。
ところが、技術の進歩により、現代にもつながる画期的なコンクリート工法によって、このような形状の窓の設置も可能になります。
意匠については、船で渡航してきた、上海に本拠をもつ設計家が、おそらくは船窓の特徴である丸窓をモチーフとして選んだのだろうと言われています。
この写真は2階から階段下を覗き見たところです。
階段の手すりの先端にあるカーブして渦を巻いているように見える部分が、クラシックでありながらも、空間に柔らかみを醸し出し、全体の雰囲気を和らげるのにもひと役買っています。
部屋のドアノブにもこれと同じあしらいが見られ、このように細部にまで手を入れる(手を抜かない)ことで、格式・グレードの高さ、上流感が演出されているようにも感じます。
2階は寝室と作りつけの衣装ダンスのある集会室(上の写真)、衣装室、控室と並びます。
この作りつけ衣装ダンスと天井照明、さらに右隅にちょこっと見える暖炉の造りから、もともと集会室として使われていたこの部屋の本来の様子が垣間見えます。
高級ヴィンテージ感のある木の肌目、そしてツヤ、さらには見事な細工……これもまた美しい鏡台ですね。
上部センターのレリーフのモチーフは百合でしょうか。
こちらは2階の控室の窓から眺めた外の景色です。
窓の形状と建物全体から立ちのぼるクラシカルな雰囲気にのまれて、日差しまでがなんだか“格調高く”感じられるようでした。
そしてこの写真は、1階の厨房(キッチン)から配膳室(パントリー)の食器棚を見たところ。
厨房は表には出ない裏方部門な場所であるためか、質実剛健・機能第一で設計された様子です。
ですが時代を経た現在それらを眺めると、シンプルなアンティークの佇まいの中に、美しさを見出すことができます。
歳月を経て古びた壁タイルの退色ぐあいもいい感じです。上部に見えるボタンがついているパネルは各部屋からの呼び出しボタンかしら?(ならば理にかなっていますね。)
洗面所(Lavatory)に飾ってある絵もさりげなく年代物。
このフレームにこの絵あり、と言いたくなるほど、よく似合っています。
こちらは、入口の内側から外に向かった眺め。
室内の暗さに対して外の陽が明るいため、ガラスドアにシルエットのように浮き彫りになる鉄の装飾模様もきれいでした。
図案はトラディショナルな意匠のように見えます。
そして最後に館の背後に廻って、庭から見た建物の全景を。
シンボリックに1本の背の高い(カメラに収まりきらない高さの)ヤシの木が植えてあるなど、
建物正面に比べて、南国的な伸びやかさが感じられるコロニアル様式の特徴がより強調されています。
美しく手入れされた庭園と建物の調和した美観とともに、いつまでも飽きずに見ていたいと思わせてくれました。
次回は「山手111番館」を訪れます。どうぞお楽しみに!
(編集部注※この現地取材は2016年に行われました)
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