地元民なら当たり前・・・!常識ってなんだろう?
私は、知らないこと以外は何でも知っています。
時々、自分でもびっくりするくらいです。
これはパソコンはすでにあったものの、今ほどネット環境が整ってはおらず、
当然スマホなどもまだなかった頃のお話です。
私はふらりと一人、大阪を旅しておりました。
海外の要人が訪日するとかで駅のコインロッカーが封鎖されて使えず、
大層憤慨したことをやけによく覚えています。
そして、初めての土地を訪れたなら、
まずはその土地の郷土料理を味わうべきと考える私は、
そのへんにあった串かつ屋さんの暖簾をくぐったのでした。
もちろん定番の「串かつ定食」をオーダーしようとメニュー表をみると、
定食の説明のところに、見慣れない品名が。
訝しげに私を見るお姉さん。
お前は一体何を言っているんだと言いたげ。
私はいったん引き下がることにしました。
何かが決定的に通じていない、と感じたからです。
やがて運ばれてくる串かつ定食。
私はおもむろにメニュー表を手に取り、
定食の説明にある品名と(定食の)実物を一つずつ、
つき合わせてみることにしたのでした。
いわゆる広告校正でいうところの
「ファクトチェック(事実確認)」です。
広告校正では、たとえば、パンフレットやチラシに電話番号や住所が記載されている場合、
実際にその番号へ電話をかけたり公的な資料をもとに調べたりして、
正しいかどうかを必ず確認します。
そんなファクトチェックを、
メニュー表と、運ばれてきた定食で内容があっているかどうか、
やってみたわけです。
串かつの4種盛りはこれ・・・
お新香はこれ・・・小鉢はこれ・・・
かくして結論は出ました。
「赤だし」とは豆味噌を使ったお味噌汁のことだったのです。
そういや赤っぽい色だったな。
そしてこれは、あとで調べたのですが、
関西および東海地方では至極当たり前の味噌汁の呼び名でした。
そのときの私にとってはまさに未知の領域、
でも店員のお姉さんにとってはきっと常識中の常識だったのです。
また、逆のパターンもありました。
某スーパーのチラシ広告の制作作業に携わっていたときのことです。
制作途中の紙面の催事情報コーナーに、
地方の特産品がいくつか掲載されていました。
そこには、私が心から愛する地元の銘菓、「くるみゆべし」の名が!
私は舞い上がってしまいました。
特に首都圏で手に入れづらいものというわけでもないのですが、
地元がフィーチャーされたようで嬉しかったのです。
ところが・・・!
添えられている写真は、どう見てもきなこもち。
お皿の上に乗ったお餅に、きなこがたっぷりかかった、
美味しそうな、きなこもち。
ゆべしとちゃうやん、きなこもちやんけな?
そんなエセ関西弁が出てしまうほど、私は動揺しました。
これは見過ごせない。
断固として。
私はすぐに写真素材をもう一度確認してくれるよう担当者に頼み、
正しいくるみゆべしの写真を手配してもらい、差し替えました。
詳細な事情はこの際省きますが、
写真の使用許可をした担当者は近畿地方の出身で、
そもそも、くるみゆべしというお菓子を知らなかったようなのです。
まさに、私が「赤だし」を知らなかったように。
ですが、
これは私がくるみゆべしの正しい情報を知っていたからできたことであり、
その情報を知らない人には気づくことができないことです。
加えて、知らない人にとってはそもそも疑う余地すらないことで、
つまり串かつ屋の店員さんは「赤だし」を知らない人間がいることを、
知らなかったということなのです。
私は、知らないこと以外は何でも知っています。
知っていること以外は、何も知らないのです。