ソフトウエアと制作目線で見る校正⑤ RGBとCMYK、カラーモードの違い
印刷・出版の制作側から見て、データの特性や起こり得るミス、その原因を紐解くシリーズの5回目はRGBとCMYKについてです。
第1回目の「グラフィックソフトの要・ベクター画像とベジェ曲線」で、WEBと印刷の違いについて少し触れました。
今回は、そのカラーモードの違いについて見ていきましょう。
WEBと印刷では、色の表現の仕方が違う
そもそも、WEBは光で、印刷はインキで色を表現しています。WEBの色はモニターが放った光を通して作る色で確認しています。対して印刷は、インキが光をどのくらい吸収するかを通して見ているんですね。
●WEBはRGB(光3原色)を使う
RGBとは、光3原色のことです。「Red(赤)」「Green(緑)」「Blue(青)」の基本の3色を掛け合わせてあらゆる色を表現しています。
PCのモニター、テレビの液晶、スマホやデジタルカメラなど、この光3原色を使用しています。基本の赤、緑、青の3色は混ぜるほど明るい色になり、白に近づいていきます。これを「加法混色」と言います。プリズムに太陽光を通して光を屈折させると、虹のように色が分かれますよね。小学校の理科で実験したアレです。白い光の中には実はいろいろな色が含まれているのです。
●印刷はCMYK(インキの3原色+K)を使う
通常の紙の印刷(オフセット印刷)はCMYKを使っています。CMYKとは、インキの3原色に黒を足した4色で、「Cyan(シアン)」「Magenta(マゼンタ)」「Yellow(黄)」「Key plate(黒)」のそれぞれの頭文字をとっています。黒だからKというわけではないですよ(笑)
インキの場合はCMYの3色を混ぜ合わせると暗い色になり、黒に近づいていきます。これを「減法混色」と言います。絵の具をいろいろ混ぜ合わせると、だんだん暗い色になっていくのと同じです。
しかし3色を混ぜても純粋な黒にはなりません。下の画像でも一番濃いグレーという風に見えます。そこで印刷の場合は、このCMYにもう1版、キープレートを加えて4色で表現しています。部分的に黒を使うことで、黒の文字をハッキリ見せられるし、写真の輪郭はよりシャープに表現できます。
印刷したら、思ってたイメージと違うのはなぜ?
モニターで見ていたRGBの画像を、会社にある複合機でプリントしてみると、だいぶイメージが違いますよね。くすんだ色合いになりませんか。RGBとCMYKでは、再現できる色の領域「カラースペース」が違うからです。RGBの方が圧倒的にCMYKより広い領域の色を再現できるのです。光ですから。
●RGBは最大255、CMYKは最大100
RGBは赤、緑、青のそれぞれの強さを0~255までの数値(256段階)で表します。上の図の赤だと「R:255,G:0,B:0」になります。一方CMYKは0~100までのパーセントで表します。マゼンタとイエローを足した赤、俗に言う「金赤」は「C:0%,M:100%,Y:100%」です。255と100で、もうそれだけでRGBの方が表現の幅が広いことがわかります。
RGBは256×256×256で、理論上フルカラーは1670万色表現できるわけです。そんなにあっても人間の目が追い付いていけませんけども。
●CMYKは網点にして印刷するので物理的限界が
CMYKは0~100%は101段階なので、101×101×101×101で1億色・・にはならないんですね。印刷の場合、写真や文字の色はどうやって印刷されているかというと、インキを混ぜてるわけではありません。色をC版、M版、Y版、K版の4版に分解して網点に直しています。それを1版づつ重ねて刷り、ひとつの色を作ってるのです。下の画像の4版を重ねて刷ってゆき、4回全部刷ると左のCMYKの画像になるんですね。
網点の大きさは物理的に限界があるので、DTPが普及する前の時代は、通常10%きざみで色を指定していました。それだと計算上は11の4乗で1万4千色になります。
しかし、キープレートの黒を足してもCMYだけの場合と同じに見える色が多々出てきます。さらに紙への印刷は、インキの総量で300%くらいが限界です。例えば、C:70%,M:70%,Y70%,K90%で全部足すと300%です。これを超えるとインキの渇きが悪く、裏映りしたり汚れになったりするので、印刷会社からNGが出されます。もっと少なく250%でNGを出すところもあります。
そこから考えても、1%きざみで指定できる現在でも、物理的に4色インキで印刷できるのは数万色といったところじゃないでしょうか。RGBの光に比べたら、圧倒的に少ないということですね。
●CMYKは蛍光色のような色は苦手
光はインキでは再現できない明るい鮮やかな色を表現できますが、4色インキでは再現に限度がある。特に蛍光色のような明るい彩度の高い色は苦手です。だから、RGBで作成したデータをそのまま印刷すると、色味がくすんでしまうのです。
目的が印刷ならば、データはRGBではなくCMYKで作成しなければなりません。そうすると最初から表現できる色がおのずと決まってきます。モニターで見ている色と印刷される色のイメージ差が少なくなります。下の画像は、RGBで作ったイラストをCMYKに変換してみました。蛍光色が苦手というのがわかると思います。
媒体によりカラーモードが変わる
デザイナーは制作物の目的によって、データの作り方を変えています。使用する媒体によってカラーモードが変わるので、大手企業は自社のロゴマークに使用のルール、最近の言い方だと「レギュレーション※」を設けています。
RGBの場合、プロセスカラー(CMYK)の場合、特色インキの場合、モノクロの場合、それぞれに指定色があります。モノクロにだって指定があるんですよ。ある部分はアミ何パーセントで使用するとか。そうやってルールを設けて、どんな媒体でもイメージが統一できるようにしているのです。
制作物を発注する場合、その使用媒体をきちんと伝えることが大事です。媒体がなにになるかで、データの作り方が変わってきますから。
●媒体によるRGBとCMYKの使い分け
チラシ・DM・POPなど通常のオフセット印刷→CMYK
新聞広告→モノクロ(特色2色や4色などの場合あり)
雑誌広告→CMYK
ネット広告などWEB用画像やバナー→RGB
●ワード、パワポはCMYKで作れない
普段は気付かないかもしれませんが、WindowsはCMYKに冷たいです。ワード、パワーポイントなどMicrosoft Officeは、RGBでしか作れないんですから。もともとWindowsのビジネス文書用アプリなので、印刷することは考えてないんですね。
パワポやワードで印刷入稿を受けてくれる場合でも、印刷会社の方でCMYKに変換して印刷しています。できあがりが全体にくすんだ色味になってしまうことは知っておいた方がいいでしょう。
印刷で蛍光色を表したいなら、特殊インキがある
CMYKの4つのインキ以外にも、いろいろな特殊インキがあります。凝った商品パッケージ、DM、書籍の表紙、グリーティングカードなどでよく使われます。蛍光色だったり、金や銀、印刷部分が盛り上がってたり、文字だけが光って見えたり、感熱で文字が出たり消えたり、こすると香りが出てくるインキなど。
それ、全部、特殊インキを使った特殊印刷です。お金はかかりますが、印象的な贅沢な作りになります。仕事だって、たまには贅沢がしたいもんです・・はい。
駆け足でやってきた本シリーズですが、今回で最終回となります。
ありがとうございました。