【旅】横浜山手西洋館めぐり#04 エリスマン邸〈神奈川県横浜市〉
都会での忙しい毎日に疲れたら、ふらっと旅に出てリフレッシュしてみませんか?
シリーズ『町旅』は、そんなあなたを癒してくれたり、
改めて日本の魅力を再発見できる「ニッポンの旅」をご提案します。
外国人居留地の面影が残る神奈川県の横浜にある、趣深い「横浜山手西洋館」を巡るこのシリーズ。
現在コロナ禍ということもあり、館内での撮影は禁止なのですが、
この現地取材は2016年に行われたものなので、その内部もバッチリ撮影。
見どころも写真でたっぷりお伝えしています。お楽しみに♪
第4弾の今回は……
『エリスマン邸』。
住所としては、「神奈川県横浜市中区元町1-77-4」に位置します。
スイス生まれのフリッツ・エリスマンは、生糸貿易商社シーベルヘグナー商会の横浜支配人として活躍した人物。そんな彼が1925年から1926年にかけて山手町127番地に建てたのが、このエリスマン邸です。日本の建築界に大きな影響を与えた「現代建築の父」・チェコ出身の建築家アントニン・レーモンドによる設計です。
レーモンドは1919年、旧帝国ホテル設計助手として、世界的建築家のフランク・ロイド・ライト(F・L・ライト)とともに来日し、第二次大戦中を除き40年以上を日本に滞在しながら、計400点以上もの設計を手掛けました。
このエリスマン邸設計当時のレーモンドは、ライトのもとから独立して間もない時期のため、細部などにはまだライトの強い影響が見られ、のちにモダニズム建築の最先端と呼ばれる自身の建築スタイルを確立する前段階の移行期的作品という見方がされています。
もとは建築面積約81坪の木造2階建て・和館付き。
竪羽目張りの階下、下見板張りの階上、スレート葺の屋根が特徴的な純白の洋館でした。
1982年にマンション建築のために解体され、その後横浜市が当時の所有者から譲り受けて、1990年に今の場所(81番地)に再建されました。
その際に、併設されていた和館をなくした洋館だけのシンプルな建屋構造になりました。
煙突、ベランダ、屋根窓、上げ下げ窓、鎧戸といった異人館的要素をもちながら、軒の水平線が低い位置で強調されているあたりなどには、まだ師のF・L・ライトの影響が見られます。
こちら1階の応接室にもライトの影響が感じられます。
特に暖炉は、意匠こそレーモンドの独創性が光りますが、この部屋の中でひときわ存在感を放っているのもまた暖炉、というあたりから、「F・L・ライトの内装設計の中で非常に重要な位置を占めていた暖炉というものに対しての思想哲学が、レーモンドにも引き継がれた」という穿った見方もできます。
レーモンドと同様にライトに師事した建築家の遠藤楽は、「家を建てる時は必ず暖炉を作れ。暖炉は建築家にとって詩情豊かな友だ」と師匠が繰り返し話したと書き残しています。
また、「一流の暖炉が設えられない建築家は一流の建築家とは言えない」の言葉はレーモンドに対してのもので、それほどの暖炉に対する強いこだわりをフランク・ロイド・ライトが持っていたという話は有名です。
このテーブルも暖炉と同じく個性的ですが、このような多角形を用いた造形の家具もF・L・ライトの建築作品の内装設計などにも見られるものでした。
この椅子とテーブルはレーモンドが過去に他の家のために設計したものを復元したもので、大谷石を化粧張りしたマントルピースとよく調和しています。
応接室と居間兼食堂の両方につながっている陽あたりの良いサンルーム。
周囲を緑に囲まれた眺めは最高で、読書にも向きそうな落ち着いた空間でした。
玄関を入ってすぐの正面に当たる位置にある食堂兼居間です。
奥のサンルームへと続くため空間的な広がりを感じさせます。
向かって右からは応接室にも入れます。
上の食堂兼居間のゴールデンウィーク中の仕様です。
窓の側に鎧兜甲冑の人形が置かれ、端午の節句をテーマにしたテーブルセッティングで飾られていました。
そしていつもの照明チェック・・・!
まずは、居間の照明です。
こちらは華美すぎず、シックで上品なつくりです。
続いては、サンルームの照明。
クラシカルな中にもモダンテイストが光ります。
そして、応接室の暖炉上部の照明。
シンメトリーでアールデコとも思える幾何学的な造形が施されており目を引きます。
照明の下の多角形的な切り込みも個性的で、大谷石を加工したマントルピースのミニマルな造形とは大きな対比を見せています。
レイモンドが独自性を模索しているようにも感じられる箇所です。
バスルームも覗いてみましょう。
ノスタルジックな雰囲気が漂いますね。
居間兼食堂の窓側のコーナーに置かれた「楽譜入れ」。
年季を感じさせる風合いですね。
2階は現在は資料などの展示室に当てられています。
アンティークのドアノブと名物(?)の公衆電話。
邸内に併設されているお店『しょうゆきゃふぇ』にも寄りました。
※編集部注:以下の記事内で紹介しているエリスマン邸の『しょうゆきゃふぇ』は、修復工事のため、2019年4月より「しょうゆきゃふぇ元町」として移転リニューアルオープンしています。詳しくは公式サイトをご覧ください↓
ここの名物はなんといっても・・・生プリン!
カラメルソースとムースと卵黄をかる~く混ぜて分離したままのを食べる、このとろとろプリンの味と食感はたまりません。
こちらはカフェの店内。緑に囲まれ、贅沢な時間をゆったり過ごすのにふさわしいロケーションです。
こちらは外観。1階のちょうど張り出したところがカフェです。
高台に位置しているので、窓からの眺めも抜群でした。
次回は「ベーリックホール」を訪れます。どうぞお楽しみに。
(編集部注※この現地取材は2016年に行われました)
※編集部注:記事内で紹介したスポットは現在、ウィルスの影響で営業時間の変更や休業されている場合がございます。
お出かけ前に必ず、施設の公式サイトなどでご確認ください。