「世界を変えた本」の“本”としての考察~[世界を変えた書物]展に行ってきた。
※<編集部注>[世界を変えた書物]展の次回開催は、2019年9月13日(金)~29日(日)@JR九州ホール(JR博多シティ9F)となります。詳しくはコチラへ。
以下は2018年の東京・上野の森美術館で開催された際のレポートです。
(そのため、次回開催とは展示内容等が変更になっている場合がございます。ご注意ください)
こんにちは。ダンラクライターの坪内悟です。
「オレが世界を変えてやるぜ!」
若い頃にそんな夢を持っていた人もいるかもしれませんが、
“世界を変える”って、
そんなこと
現実とは思えませんよね・・・。
でも、それを体感することができると聞き、
上野の森美術館に行ってきました。
そこで開催されていたのが、
世界を一変させた「発見」や「科学技術」に関する本の
なんと“初版本”の実物がわんさか展示されるというんです!
本好きの私としては、行くっきゃないでしょ!
おら、わくわっくすんぞっ!
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で、来た!!
さて、いざ、中へ!
最初に広がる空間には、どーんっ!と
巨大な本棚。
その膨大な量の本に圧倒されます・・・・・。
そんな会場は、なんと撮影可。
こんなのもぅインスタ映え必至じゃないスかー!
ということで、みなさんいろんなアングルで撮影しまくってました♪
ここだけでもテンション上がりますねェ♪
このゾーンをくぐり抜けると・・・
キターーーーーーーッ!
『プリンキピア(自然哲学の数学的原理)』
1687年にロンドンで出版された初版本です。
この第3部で「万有引力論」が論じられているんですよ!!
やっべぇ!
世界史でバリバリ習ったやつやん!!
たしかにこれで、世界変わったわ!
他にも
コペルニクス『天球の回転について』(1543年)やら
イシドール『語源学』(1472年)やら、
レントゲン『新種の輻射線について』(1896‐1897年)やら
アインシュタイン『特殊相対性理論及び一般相対性理論』(1917年)やら・・・
こんなんが、ずらーっと約100冊も並んでるんです!
この展覧会、
数学や物理・化学、世界史を受験勉強した人は
確実にテンション上がると思います。
でも、バリバリ文系学生だったあなたも大丈夫♪
この記事では、単純に「本」という視点で注目本をご紹介!
この会場に展示された本はどれも、
1445年頃にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を考案し、
その実用化以降に出版された本なんだそう。
【活版印刷とは?】
金属や木に、印刷される部分がそれ以外の所より一段高くなるようハンコ状に文字を彫り込んで「活字」を制作。
それらを並べて文章にした「活版」・「組版」と呼ばれる“板”を作り、それに塗料を塗って行う印刷のこと。
それまで手書きで本を写していたのが、この技術のおかげで
素早く、しかも大量にコピーできるようになり、急速に「本」が拡大。
これで世界に広まった「学術書」の知識のおかげで、
17世紀に“科学革命”が起きたと言われている。
だから、よく見ると紙面はみんな
裏のページの文字が
ボコッと盛り上がっています。
歴史を感じますよね。ふむふむ。
そんな中、まず最初に注目したのが、この本。
ピエール・キュリーと
マリー・スクウォドフスカ・キュリーの
『ピッチブレンドの中に含まれている新種の放射性物質について』
1898年、パリで出版された初版本。
あのキュリー夫人とその夫が書いたこの本で、
初めて『放射性』という言葉が使われたんだとか。
実はこの展覧会、
本の下が鏡張りになっていて、
装丁まで見えるようになっているんです。
見て!この本、装丁がめちゃめちゃサイケ!!
・・・というか、ちょっとおどろおどろ過ぎて
日野日出志先生の怪奇マンガみたい!
そして、同じく1903年にパリで出版された
こちらも装丁がやたらオシャレ!
キュリー夫人が
こういうとこにこだわっていたんですかね・・・?
そして、同じくオシャレなのが、
1637年にライデンで出版されたこちらの本。
表紙裏(いわゆる表2・表3)が隠れオシャレ!
イイですね、こういう渋いこだわり♪
そしてオシャレな装丁では、こちらも負けてません。
ゲオルグ・ジーモン・オームの
『数学的に取り扱ったガルヴァーニ電池』
1827年のベルリンで刊行された初版本。
みなさんご存じ、あの「オームの法則」の発見が書かれた本です。
その縁は、なんとハコ型!
辞書など、横にスライドして入れるハコの本は今でもありますけど、
表紙自体がハコのようになっているのって見ませんよね・・・。
あ、ちなみに現代の「本についてるハコ」は、
「箱」ではなく「函」って漢字で書くんですって。
でも、これはもっとスゴイ!
1610年にヴェネツィアで出版された初版本。
その表紙がハコ型ってだけでなく・・・
その中身は金ブチ!
うーん、実におもしろい。
・・・・えー、次いきましょっか。
他にも変わった表紙だったのが、
撃った大砲が放物線を描いて落ちることを発見し、近代力学の基礎を築いた、
1537年のヴェネツィアで出版された初版本なんですが、
こちらはヒモ付きの表紙。
タルターリアはルネッサンスの優秀な数学者であり、工学者・測量技師だったそうで、
現場に持ち歩きやすいように、本が拡がらないようなヒモを付けたのかも・・・?
また、中身で気になったのが、こちら。
『自然哲学及び機械技術に関する講義』
1807年のロンドンで出た初版本。
これの中身には、
なんとカラフルなカラーページがあるんです!
いつから多色のカラー印刷ができるようになったんでしょう・・・?
調べてみると、長い間木版や銅版などで印刷したものに手作業で彩色していたのが、
18世紀の末期にやっと「リトグラフ」、つまり石版による印刷技術が発明され、
多色カラー印刷が可能になったみたい。
(あ、この本がその印刷方法かはわかりませんけど・・・
ちなみに3色くらいであれば、1457年にはドイツにて初の3色刷りが行われたらしいです)
それから次は
あのライト兄弟が動力飛行のために行った
グライダー飛行実験の記録で、1901年にシカゴで刊行された初版本。
気になったのは、このグライダー写真のページが・・・
みょ~に紙質がつるつる!
ケースに入っていたから、もちろん触れなかったけど
とても素材が気になりました・・・。
そして、個人的に一番アツかった本を最後にご紹介。
他の本はラテン語やらドイツ語やらで読めなかったんだけど、
これは英語で読めるから、臨場感満載で激アツ具合がハンパなかった!
それがこちら。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の
『アポロ11号任務記録 月面への第一歩』
1969年にヒューストンで刊行された初版。
アームストロング船長とヒューストンの交信記録で、あの名言
「これは小さな一歩だが、
人類にとっては大きな一歩である」
も書かれているんです。
他にも、ダーウィンの『種の起源』なんかは
実物の他にレプリカ本展示のコーナーもあって、
実際に触ったりすることもできちゃうから、
本の重さや厚さ・ページ数など、
名著を五感で体験できるんです。
そう考えると、電子書籍もいいですけど、
やっぱり「本」っていいですよね。
いやぁ、これらの稀覯本(極めて珍しい、めったに見られない本)は、ぜぇーんぶ
金沢工業大学が所蔵する「工学の曙文庫」のもの。
ライブラリーセンター顧問の竺覚暁(ちく かくぎょう)さんが
40年以上かけて集めたコレクションなんですって。
しかもこの展覧会自体、
入場は無料!!!
どんだけ太っ腹なんスか・・・。
この展覧会は、
2018年9月8日~9月24日(会期中無休)の
上野の森美術館での開催は終わってしまいましたが、
実はそれ以前にも3回開催されているんだとか。
(金沢(2012)・名古屋(2013)・大阪(2015))
くわしくはこちらをチェック→[世界を変えた書物]展公式サイト
今回逃しちゃったあなたにも
まだまだ「世界を変えた書物」に
出会うチャンスが巡ってくるかも・・・!
こちらのサイトからも収蔵本を見ることができますよ♪
「世界を変えた書物「工学の曙文庫」所蔵110選」
https://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/main.html
あ、そうだ。
こんな本もご紹介しときますね!
『卓越する数学者の全集』
1537年、ヴェネツィアで出版された初版本。
ギリシア最大の幾何学者・アポロニウスが著したこの本で
「楕円」「放物線」「双曲線」が命名されたんですって。
そんなスゴイ本も、うっかり印刷の時に誤植しちゃったんでしょうね。
紙貼って、訂正してあります。
また、買った本人が書き換えたのか、
小文字を大文字に直してるところもあったりして・・・。
今も昔も、ちゃんと、校正入れなくっちゃね…!
・・・宣伝でした。
てへぺろ♥
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