【旅】紅葉に染まるぶどう畑と、明治建築の母屋を使ったワイナリー<勝沼ぶどう郷 甲州市勝沼町>
都会での忙しい毎日に疲れたら、ふらっと旅に出てリフレッシュしてみませんか?
シリーズ『町旅』は、そんなあなたを癒してくれたり、
改めて日本の魅力を再発見できる「ニッポンの旅」をご提案します。
秋といえばボジョレーをはじめ、ワインの美味しい季節ですよね。
もちろん、国産のワインだって負けてはいませんよ!
今回はそんな日本のワイナリーにお邪魔してみましょう。
江戸時代には甲州街道の宿場町として栄えていた勝沼。
明治から昭和初期までは養蚕のかたわら、ぶどうを主体に果物を産出する農業地帯でしたが、今は『ぶどうとワインの生産地』として有名です。
日本ワイン発祥の地でもある山梨県は、国内で最も多い新旧約80(※)のワイナリーを有しています。(※「ワインの国山梨」より)
JR中央本線に乗って「勝沼ぶどう郷」駅に降り立ったら、
まずはその見晴らしの良さを堪能してみましょう。
対岸に見える小高い丘の頂上には勝沼のランドマーク『勝沼ぶどうの丘』が見えます。
ここから季節ごとに移り変わる田園風景の様子を見るのも、訪れた時の楽しみのひとつです。
駅ホームから『勝沼ぶどうの丘』までは、散策するにもちょうど良い距離。
坂や勾配も、つね日頃の運動不足解消にはぴったりです(笑)
降りてきた坂道を途中で振り返れば、思わず気持ちがほっこりする晩秋の里山風景にも出会えますよ♪
あれ?こちらの家の屋根、ちょっと珍しくありません?
実はこのおたく、もともとは養蚕農家さんなんです。
関東では、農業生産のかたわら養蚕をおこなうのが、江戸から戦後まで続いた農家の典型的な営農風景でした。
山梨には養蚕農家だった家も数多く残っており、里山風景の中に歴史の痕跡を見ることができます。
蚕にとって風通しをよくするための「高窓(突き上げ屋根)」が設けられた家は、以前に養蚕農家だったことをしめすものなんです。
そして目に飛び込んでくるのは、晩秋の陽光に照らされて輝く鮮やかなオレンジ色。
本格的な冬の到来前に、軒下などに柿をいっせいに並べて寒風にさらし、ころ柿(干し柿)を作る。
昔から続く甲府地方などに見られる、晩秋から初冬にかけての風物詩です。
さて、今回訪ねたのは『原茂(はらも)ワイン』。
大正13(1924)年創業の小さな家族経営のワイナリーです。
明治期に建てられた築130年以上の母屋は、社長で代表を務める古屋氏の家を改装したものだそうです。
ほら、屋根には養蚕農家の特徴である高窓がついてるでしょ?
実は古屋家は勝沼の地主で、もとは小作人たちを雇い、稲作や畑作、養蚕などを手がけていたんだそう。
しかし国内における養蚕業の衰退とともに、山梨県では桑畑からブドウ栽培に多くの農家がシフトしていき……古屋家のようにワイン造りへと進む生産者も生まれたといいます。
中に入っていくと、ワイナリーのガーデンが広がり、
頭上一面がぶどう棚に覆われています。
透過した陽の光がキラキラと地面に落ちて、光と影のマーブル模様が愉しげですね。
ぶどう棚と古民家と瓦屋根―――まるで中世の古城のような雰囲気を醸す原茂ワインの園内。
ここでは都会の喧騒もどこか遠い世界のように感じられます。
上の写真が撮られた母屋の2階。
実はここには昨年秋(2020年10月)まで、
雑誌などでもよく取り上げられる人気のカフェ『カーサ・ダ・ノーマ』がありました。
古民家の落ち着いた空気に加え、おいしいワインと料理で、つい時間を忘れて過ごしたくなる癒やし空間。
もと蚕室の“なごり”である気抜き用の窓が、内装のおしゃれなアクセントになっていました。
地元のオーガニック野菜を使った、味も見た目も力強いバーニャカウダ・サラダや
赤ワインに合いそうな『とりレバーと牛蒡のコンフィ』など、
甲州ぶどう100%で作られたワインにぴったりの絶品料理を楽しむことができたのですが……
コロナの影響もあり、22年わたるその歴史に幕を閉じることに。
現在(2021年10月)でも『原茂ワイン』ではワインの試飲も休止し、販売のみを行っています。
残念ながら園内でその味を堪能することはできませんが、
お家に帰ってゆっくり、秋の夜長のすてきなひと時をワインと一緒にいかがですか?
※編集部注:記事内で紹介したスポットなどは現在、ウィルスの影響で営業時間の変更や休業されている場合がございます。
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