ビジネスチャンス!? “余白”と“偶然”がおじさんの武器になる
このシリーズではダンラクライター・坪内悟が出逢った”身近な人”に聞いた、「ちょっとタメになる仕事論」を集めました。あなたの仕事のヒントになれば幸いです。
こんにちは 40代半ば、いまだ独り身
ダンラクライターの坪内悟です。
このあいだ、真夜中になんとなくお酒が飲みたくなって、友達がマスターを務める下北沢のバーへひとりでふらりと。
時刻は深夜1時過ぎ。
4席分のカウンターしかない店内では、30代後半~40代前半くらいの男性客が一人、マスターと話し込んでいた。
「おつかれー」と俺もカウンター席に座り、ウイスキーを1杯。
お客さんとの会話がひと段落ついたところで、こちらもマスターに話しかける。
「こないだiPhone落としちゃってさぁ。でもなんとか見つかって・・・」
「マヂで!?」
「でも『iPhoneを探す』ってあれスゴいんだよ・・・」
などとなかなか盛り上がったところで、マスターは
「あ、ちょっと氷補充してくるわ」と冷凍庫のある店の外へ消えていった。
マスターがいなくなったら、先ほどのお客さんが俺に声をかけてきた。
「スマホ、見つかってよかったですね」
──ありがとうございます、
と俺が答えると
「私ね、自分の会社でサイバー担当みたいのをやってまして。会社から社員に支給してるスマホを全部管理する仕事してるんですよ」と続けてきた。
ーーー(なるほど、それでこっちの話に興味持ってくれたのね。まぁ、社員さんが失くしたらコワいもんねぇ。)
「さっき言ってた『iPhoneを探す』みたいに、スマホっていまGPS入ってるじゃないですか。だから外回りの営業がサボってたら、すぐわかるんですよ」
ーーー(うわ、めっちゃオモロい話やん!ラジオのトークのネタになるかも♪)
──もうちょっと詳しく聞かせてください!
初対面の二人なのに、トークに花が咲きまくった。
しばらくしてそのお客さんが帰ったところへ、昔からお知り合いの、某ニュース系フリーペーパーのM編集長(50代半ば)がやってきた。
さっきまで取材だったという編集長は「疲れたぁ~」とぼやきながらビールをうまそうに飲み、ちょっといい話をしてくれた。
M「最近の若い奴らにはさ、“余白”がないんだよ、“余白”が」
──余白・・・?
M「あいつら、ニュースはテレビとか新聞とかじゃなくって、スマホ使ってネットで見るからさ。自分が知りたいと思った情報しか知ることないじゃない」
──でも、他のニュースも、タイトルは並んでるじゃないですか?
M「そこは自らポチっとしなきゃならないでしょうが。そのひと手間がおっくうなんだよ」
──なるほど。
M「検索からストレートにその情報にたどり着くことだってできるし。でもそうすると、 “余白”がないからさ、全然興味なかった情報との“偶然の出会い”みたいのもないわけよ」
──あ、それって本屋をぶらっとすると、「お、こんな本出てるんだ」って、まったく知らなかった平積みになってる本にも興味が出てくるみたいな。
M「そうそう。●●●●みたいなネット書店だと、なかなかあれはないよな」
──たしかにネット書店でも「試し読み」できるとこはいいんスけどね・・・
M「で、最近の若い奴らは呑まないだろ?」
──まぁ、演劇界でも呑まない若手は増えましたねぇ。
M「そうすると、こういうバーでたまたま居合わせた見ず知らずのおっさんから「よくわかんない話」を聞かされるってこともないわけよ」
──結局はかまってほしいんじゃんかwww
M「いや、本当はそういう、自分とは全然違う世界の話を聞くってのが大事なのよ。だからそれをちゃんとできる、“余白”と“偶然”の面白味をわかってるっていうのが、お前らおじさんの強みなわけ。がんばれよ」
──そういえば俺もさっき、スマホ使ったサボり特定班の話聞けたしな。ちゃーんとラジオのトークネタに使わせて戴きます♪
『セレンディピティ(serendipity)』という言葉があります。これは18世紀の造語で、「思いがけないものを偶然に発見すること」。
有名なところでは「フレミングによるペニシリンの発見」、「イタリアのポンペイの遺跡発見」、「ニュートンの万有引力の法則の発見」、そしてビジネスの世界でも『コカ・コーラ』の発明や『ポストイット』の開発などが例に挙げられます。 そんな“偶然”が、次のビジネスチャンスのきっかけになるかもしれないのです。
そして『セレンディピティ』は、「幸運を掴み取る能力のこと」という意味でも使われます。
自分の生活に、そして心に“余白”を作って、“偶然の出会い”を生まれやすくしてみるのも面白いですよ。
というわけで、いつかあなたと下北沢で呑む夜を楽しみにしています(笑)