【旅】のんびりレトロな電車に乗って、神話の国をめぐる<島根県出雲市>
都会での忙しい毎日に疲れたら、ふらっと旅に出てリフレッシュしてみませんか?
シリーズ『町旅』は、そんなあなたを癒してくれたり、
改めて日本の魅力を再発見できる「ニッポンの旅」をご提案します。
現在の暦では10月下旬~11月上旬に始まる「旧暦10月」。
この月は八百万(やおよろず)の神々がその土地からいなくなってしまうので、全国的には「神無月」と呼ばれます。
では神々はどこへ・・・そう、出雲の国に集まるのです。
ですから出雲では、神々が集うので「神在月」と呼ぶんですよ。
今回はそんな出雲の地を巡ってみたいと思います。
まずは出雲大社へ向かってみましょう。
出雲大社へ行くには、JR出雲市駅から乗り換えて、“ばたでん”こと一畑電車が便利です。
映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』のロケ地としても有名になりましたが、
一畑電車の車両は、ほとんどが関東・関西の第一線で活躍していた名車達。
田園のなかをゆっくり走る姿がとても愛らしいです。
こちらの写真は、大社線への乗換駅「川跡」にて。
左が、出雲大社前へ向かう元東急電鉄の1000系。東急・東横線と東京メトロ・日比谷線の直通運転で活躍した車両だそうです。
右は、松江しんじ湖温泉へ向かう元京王電鉄5000系。京王線とは線路幅がちがうため、台車を営団地下鉄のものと付け替えています。懐かしい香りのする運転台も素敵です。
そしていよいよ出雲大社に到着。
出雲大社には、古事記に登場する「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」が祭られています。
出雲大社はいわゆる “縁結びの神様” として有名ですが、これは男女の縁に限らず、神在月にたくさんの神々が集っていろんな縁を結ぶ会議をすることに由来するのだそう。
境内のみならず、土地そのものに、悠久の時間と霊気を感じる場所ですね。
ところで、“ぜんざい” の発祥地が出雲だって知ってます?
神在月の神事「神在祭(かみありさい)」で振る舞われた「神在(じんざい)餅」が起源なのだとか。
その「じんざい」が、出雲弁で訛って「ずんざい」、さらには「ぜんざい」となって京都に伝わったのだといいます。
なるほど、ですよね。
そして鉄ファンのみならず、一度は見てみたいのがJR旧大社駅です。
大社駅は明治45年の開業から出雲大社へ参拝する多くの乗客を運びましたが、残念ながら平成2年に廃線となったJR(旧国鉄)大社線の終着駅です。
出雲大社の門前町にふさわしく、神社様式を取り入れた格調高い木造建築が魅力です。
駅舎へ入ると、高い天井と広い空間に圧倒されます。大正風の灯篭型の和風シャンデリアがしゃれてますね。
屋根にも特徴があって、中央には千鳥破風が取り付けられ、棟には鴟尾(しび)がのり、各破風には懸魚(げぎょ)が付けられています。
瓦も一般の物より大きい特製品で、玄関中央の懸魚の上野瓦は国鉄マークである動輪があしらわれています。
平成16年には国の重要文化財に指定された豪壮な駅舎と、終着駅の線路が旅情を掻き立てる大社駅。
構内には日本を代表する蒸気機関車D51も保存されています。
また、出雲地方独特の風景といえば、この築地松(ついじまつ)。
日本海からの厳しい季節風を防ぎ、斐伊川の氾濫から土地を守るなどが目的といわれています。
屋敷の西側と北側に植えられた黒松が、一定の高さに刈り整えられ、とても美しい景観を形づくっています。
長い年月をかけて培われてきた景観は、その土地固有の文化を顕していておもしろいですね。
では再び、“ばたでん”に乗って、ちょっと足を伸ばしてみましょう。
雲州平田駅で降りて「木綿街道」へ向かいます。
平田は、14世紀から近江商人らによって開拓され、商人の町として栄えたところ。
江戸末期から明治初期にかけては、大阪や京都で良質の木綿として高く評価された“平田木綿”の集散地として発展し、綿花流通の道として「木綿街道」と呼ばれるようになりました。
創業三百年の菓子屋をはじめ、造り酒屋や醤油店などがあり、町歩きを楽しむにはもってこいです。
たっぷり一日楽しんだ後は、斐伊川(ひいかわ)の夕景でしめくくり。
斐伊川は全長 153km、中国山地の船通山から流れだし、出雲平野を横切って宍道湖へと至る河川です。
この川が天井川になったのは、かつて上流で「たたら製鉄」が行われ、砂鉄を採取するための「鉄穴(かんな)流し」によって大量の土砂が流されたためといいます。
まるで “もののけ姫” の世界ですね。
また、古事記に登場する肥河(ひのかわ)、上流で素盞鳴尊が八岐大蛇を退治した川がこの川だとも言われているんですよ。
神話の国の風景は、なぜかどこまでも奥深い。
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