心をノッキングさせるのが、ブレイクへの近道~『夜景おじさん』展に行ってきた
このシリーズではダンラクライター・坪内悟が出逢った”身近な人”に聞いた、「ちょっとタメになる仕事論」を集めました。あなたの仕事のヒントになれば幸いです。
こんにちは、街ブラ大好き
ダンラクライターの坪内悟です。
週末ともなると、『ぶらり途中下車の旅』とか『有吉くんの正直さんぽ』とか、ほーんとついつい観ちゃって。あ、平日休みのときは『じゅん散歩』も観ますよw
そんなこともあって、自分でも街をブラブラするのが結構好き。
しかも番組みたいに、あんまり目的地を決めないのが好きなんですよね。
先日も、仕事が早めに終わって、なんかおもしろいことないかなぁと中野へふらり。
中野ブロードウェイを覗いてみると、2階では往年のオカルトマンガ『エコエコアザラク』の原画展(*)がやってたり、3階の書店では“モテない男の希望の星”南海キャンディーズ山ちゃん著『天才はあきらめた』のサイン本も売ってたり(もちろん今後の勉強のために買いました)して、大満喫♪
(*「『エコエコアザラク』2019展 ~令和最初のホラー漫画原画展!~」は、現在終了しております)
そんなこんなで、ブロードウェイから早稲田通りと中野通りの交差点に出ると、そこにあるのは「ケンコー・トキナー」の本社。レンズなどを中心にカメラ用品などを扱うメーカーさんで、カメラ好きは結構お世話になってる人も多いのではないでしょうか?
──そういやアイツ、写真展やるとか言ってたの、たしかここだったよな・・・?
元俳優で、今は写真家をやっている友人が、「個展やるで」(注:彼は関西人です)ってちょっと前にメールをくれていたのです。実はこの本社2階のサービスショップの一角は、ミニギャラリーになっていて、いろんな写真展が行われているんですよ。
そんなことを思い出して2階へ上がり、
目に飛び込んだ入口の看板にあった、その写真展のタイトルは・・・
・・・・・!!
おそるおそる入ってみると、壁に並ぶ写真は
ロマンチックな夜景・・・の前にたたずむ、おじさん!
美女じゃなくって、おじさん!!
しゅっとした美男美女の夜景写真のようにうっとりは全くしないけれど、
そこに写るおじさんたちのしわ1本1本からにじみ出る“生き様”、そして“人生の哀愁”になぜだか惹かれてしまいました。
被写体となったおじさんたちは有名無名問わず。中には、あのライブハウスの「ロフト」グループ創設者・平野悠さんや、『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』(ダイヤモンド社刊)が大ヒット中の“青年失業家”田中泰延さんだって写っていました。このおじさんたちを撮った写真家・オケタニ教授によれば、『夜景おじさん』のモデルになるには条件があるそうで、「50歳以上、前日の散髪禁止、可愛げ優先」とのことw うん。たしかに謎の愛嬌が出てるから、あら不思議。
さらにはモデルも務めた田中泰延さんと、第151回芥川賞を受賞された作家・柴崎友香さんの2人がそれぞれ撮った、ゲスト撮影版『夜景おじさん』も展示。田中さんに至ってはトークショーまで開催(*8月3日に開催)とのことでした。
カメラマンはこんな人
オケタニ教授
写真家 タレント 1973年生まれ
夜景で女性を撮るための練習として140kgの後輩男子を被写体に撮影してみたところ、「あれ?男を撮る方がおもしろいんじゃないか?おじさんだったらもっと味わいがあるかもしれない!」と夜景おじさんシリーズを始める。
そんなオケタニ教授に話を聞くと、
──夜景写真と言えば普通は美男とか美女だと思うんだけど・・・
「そんな普通なの何がおもろいの?誰が見んねん!」
ーーー(・・・すみません。たしかに。)
実はオケタニ教授、写真を本格的に始めたのは約3年前。
テクニックがスゴイ写真マニアはすでにたくさんいるため、写真家として成功するにはその人たちをごぼう抜きしていかなければなりません。かといって、同じことをしていてもブレイクはないと考えたのです。
そして気づきました。そのために必要なものは、「違和感」だと。
「夜景」と「おじさん」というミスマッチ感 ────
彼は『夜景おじさん』シリーズを2017年から開始し、写真をSNSにアップ。すごい勢いで流れるTLの中で目にとめてもらうには、この「違和感」が大事だったのです。
そして思惑通り、ネットを中心に話題となり、今回と同じ会場で昨年2018年9月に第1回の写真展を開催。その写真展はこのギャラリー史上過去最高の動員を記録し、再び声がかかったと言います。
たしかに、気楽にデジタル一眼レフを持てるようになって“素人カメラマニア”がわんさかいるこの時代、大半の“テクニックだけのカメラマン”は「うわぁー上手いですね」なんて言われるだけで終わっちゃうのではないでしょうか。そのテクニックが誰も見たことがないくらいまでズバ抜けていない限り、サラーッと流されてしまうわけです。
それは他の職業でも同じこと。単純に技術だけで勝負するのは、なかなか苦難の道です。
人の記憶に残るために必要なのは、「相手の心にノッキングを起こさせる」こと。
初見で衝撃を受けるインパクトやあとからジワる違和感など、わざと“ひっかかり”を作って、「サラーッとは流れないようにする」という工夫が必要です。それが印象に残り、ブレイクにつながるのではないでしょうか?
1940年にアメリカで出版された『アイデアのつくり方』(ジェームズ・W・ヤング著:邦訳版は1988年初版・CCCメディアハウス刊)によれば、「新しいアイデアは既にあるものの“新しい組み合わせ”によって生まれる」とされています。
その方法の1つとよくされるのが、「真逆、もしくはまったく異質なものを組み合わせる」こと。それが意外であればあるほど見た人は驚き、面白いと思って他人に話したくなります。こうしてアイデアは「話題」となり、成功へ向かっていくのです。
オケタニ教授はまさにそれを体現しているわけですね。
あなたもカンタンなところでできるとすれば、昔ダウンタウンの松本さんがやってた大喜利ゲーム「OMOJAN」の要領で、”異質なものの組み合わせ”を考えてみるのもおもしろいかもしれません。それがいつかビッグビジネスにつながるかもしれませんよ!
オケタニ教授 個展 写真展vol.2『夜景おじさん』
期間:2019年7月22日(月)~8月23日(金)(11~19時)
場所:ケンコー・トキナー本社 東京都中野区中野5-68-10 KT中野ビル2F
入場:無料
くわしくは「ケンコー・トキナー」イベントページをチェック!