【初心者向け】プロの校正のやり方を校正会社がわかりやすく解説

校正のやり方

ダンクは、カタログやパンフレット、チラシなどの販促物の校正を数多く手掛けてきました。

この記事では、校正の初心者の方に向けて、校正のやり方を体系的に解説しています。

こんな悩みを抱えた企業担当者さま向けに書いた記事です。

  • パンフレットの誤字脱字が頻発している…
  • 折込チラシの価格を間違えて大きな損害が…
  • カタログの注文番号を間違えて正誤表で対応している…

正直かなりマニアックです。ですが、ここまで深く「校正」を解説したものもないのではないかと勝手に自負しています(笑)。

マニアックですが、難しいことは一切書いていません。校正会社のノウハウをわかりやすく解説しました。

明日から使えるコツをまとめたので、ぜひ貴社でも取り入れてみてください。

<対象となる制作物>

  • 商品案内やガイドブックなどのパンフレット
  • 商品やサービスを掲載するカタログ
  • 案内や告知などのチラシ・フライヤー
  • WEBサイトの記事など

校正・校閲やデザイン制作など、制作まわりの外部委託をお考えの方は、以下の資料をご一読ください。
ダンクが提供するサービスの事例や参考料金を紹介しています。

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校正とは?校閲との違い

校正というと、みなさんはどんなイメージを持っていますか?

「一人黙々と紙に向き合う文章オタクの職業」

ある意味当たっていますが、そうとも言えない部分も多々あります。

ダンクの校正現場は、読み合わせの声やあおり校正の「パタパタ」という音など結構騒がしい職場です。むしろ営業部門の方が静かだったりします。
みなさんがイメージしたのは、いわゆる「校閲」寄りの作業かもしれません。

この記事では校正のやり方を解説しています。
まずは校正と校閲の違いついて理解しておきましょう。

校正とは

校正とは、原稿と制作した紙面(以降、校正紙)の内容が違っていないかを照合していく作業を言います。

そもそもの原稿の誤り(誤字脱字や表記ゆれ、内容の不整合など)も、あわせてチェックします。

主にカタログやパンフレット、チラシなどの販促物で校正を行います。

原稿をベースにデザインしていくわけですが、この過程で多くのミスが発生します。このミスを拾うのが校正の仕事です。

<主な対象媒体>
カタログ、パンフレット、チラシ、フライヤーなどの制作物

校閲とは

校閲は、誤字脱字や表記ゆれに加えて、事実関係の誤り、根拠のないデータ表示、差別につながる表現などがないか、文章のあらゆる矛盾を指摘していく仕事です。

新聞や書籍など、文字が中心の出版業界といえばイメージしやすいかもしれません(もちろん出版業界でも校正は行いますが、主に校閲が中心です)。

ドラマ校閲ガールは賑やかでしたが、実際の校閲部は、文章のプロが黙々とプロの仕事をこなしています。

ですから、校正と校閲では求められるスキルや適性が異なるとも言えます。

<主な対象媒体>
新聞、書籍・雑誌(記事)などの出版物、レポート・報告書などの読み物類

ダンクの校正ノウハウをまとめたマニュアルを無料提供しています。
このマニュアルで「プロの現場レベルの知識」が身につきます。
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「校正」と「素読み校正」

校正には主に「校正」と「素読み校正」の2つがあります。

それぞれ作業の目的が異なります。

校正の目的

校正は、原稿を正として校正紙と照合する作業です。

原稿通りに制作物を作るのは、制作会社にとって最低限の仕事です。
ですが、これが言うほど簡単でもありません。

制作期間が短くて原稿通りに作りきれない、原稿が常に更新されるので変更内容を拾い切れない、コピペをミスしてまったく違う内容のテキストを入れてしまった・・・

ミスの原因を挙げるとキリがありませんが、こういった制作過程で発生するミスを見つけるのが校正です。

同時に、そもそもの原稿の間違い(誤字脱字や内容の不整合など)も校正で見つけます。

素読み校正の目的

素読み校正は、校正紙だけを読み込んで間違いや矛盾点を指摘していく作業です。

日本語表現の誤りや誤字脱字、表記のゆれや事実関係の間違いなど、主に文章に関するミスを指摘します。
(校閲の作業内容に近いです)

前述の校正の作業内容に含まれることもありますが、基本的には修正が落ち着いた校了間際のタイミングで、素読み校正を行います。
(状況により素読み校正のタイミングは変わりますが)

素読み校正をすることでミスを無くし、より誤解のない、わかりやすい制作物に仕上げるのが目的です。

ここからは、「校正」と「素読み校正」の具体的な作業方法とポイントを解説します

校正のやり方

まずは制作過程でのミスを防ぐ校正を解説します。

校正の主なやり方は以下の3種。

  • 突き合わせ校正
  • 読み合わせ校正
  • あおり校正

(あおり校正の代わりに、交差法や平行法という校正方法もありますが、今回は省きます。)

3種の校正のやり方とポイントを、ひとつずつ紹介していきます。この章の最後には、ぞれぞれのメリット・デメリットと使用シーンについての比較表を用意しています。

突き合わせ校正

原稿と校正紙を見比べて照合するやり方を突き合わせ校正と呼びます。
(引き合わせ、照らし合わせ、付け合わせと呼ぶこともあります)

原稿をそばに置いて、原稿と校正紙を一文字ずつ照合していくことにより、文字や数字の間違いを発見します。一人で校正をするときには最適な校正のやり方で、スタンダードな校正方法です。

突き合わせ校正のやり方 

①(右利きの場合は)原稿を左に、校正紙を右に置きます。
(利き手側に校正紙を置いてください)

この置き方にポイントが。

突き合わせ校正
<NG例>原稿と校正紙が離れすぎていると見間違いしやすくなります

できるだけ視線の移動を少なくするために、確認箇所を近づけて並べます。

これは子どもの宿題の丸つけなどでも同じことが言えます。

突き合わせ校正
<OK例>原稿と校正紙を近づけて、見間違いを防ぎます

紙を近づけても遠いと感じる場合は、上の写真のように折って近づけるようにすると、見間違いのリスクを下げるとともに、作業効率も向上します。

②左手は確認箇所を指差しして、原稿のどこを見ているか見失わないようにします。

原稿と校正紙を見比べて原稿通りかどうか確認し、校正紙をマーカーなどで消し込んでいきます。原稿側にも確認した箇所にチェックを入れていきます。

突き合わせ校正
左手で確認箇所を指さしながら

③最後に確認モレ(消し込みモレ)がないかを校正紙と原稿の両方を見直します。

突き合わせ校正
確認モレがないかマーカーの消え残しをチェック

突き合わせ校正のポイント

情報を細分化してチェックする

とにかく一つひとつの情報を細分化して見ていくのがポイントです。

文字だったら「一文字ずつ」、ロゴやイラストだったら「図形ひとつずつの色・形」というように、情報を原子単位でチェックするということです。

最後は必ず見直しする

最も重要なのは、作業の最後に確認モレ(消し込みモレ)がないか見直すことです。

消し込み作業をするのは見直しをするためです。極端に言えば、見直しをしないのであれば消し込み作業も必要ありません。

皮肉なもので、確認し忘れた箇所に限ってミスが発生することがよくあります。

ダンクの過去のミスを分析しても、実は単純な確認モレがミスの原因の過半を占めているのです。

子どもの頃から親や先生に「問題は解いたら必ず見直しなさい」と言われてきた方もいるかと思いますが、案外見直しのできない大人が多いのが実情です。

読み合わせ校正

簡単に言うと一人で行う突き合わせ校正を、作業分担して二人で行うやり方です。

「視覚と聴覚」を使った校正方法である点が特徴のひとつです。

  • 読み手(原稿を読む人)
  • 消し手(原稿通りに情報が入っているかチェックする人)

の二人に分かれて校正を行います。

突き合わせ校正では一人で原稿と校正紙を目で追いながら作業しますが、読み合わせ校正は原稿と校正紙、それぞれに集中できるのが最大のメリットです。

消し手は、読み手が言った通りに出来ているか校正紙を確認します。
原稿を都度見るのではなく、原稿を音として認識するため、視線が動いてどこを見ているか曖昧になるというリスクがなくなります。

読み手は、原稿を一字一句間違わずに読み上げます。
原稿に集中できるので、原稿の矛盾点や間違いにも気がつきやすくなります。

二人での作業となるため時間とコストはかかりますが、高い精度で校正を行うことができます。

突き合わせ校正と読み合わせ校正、どちらが精度高く指摘できるかダンク社内で実験したことがあります。
小さな文字で書いてある「保険料」を、わざと「保険金」と誤植したテスト問題を作成しました。

結果は、読み合わせ校正は見落としゼロ。対して、突き合わせ校正では見落としがありました。

読み合わせ校正のやり方

①読み手と消し手は、基本的に横並びに座って作業します。

横並びになることで、消しては原稿を、読み手は校正紙を見やすくします。
原稿も校正紙も、お互いの目が届く範囲になるようにしましょう。

読み合わせ校正
読み手と消し手は横並びに座る

②読み手は、原稿を読み上げたら読んだ原稿のところにチェック、
 消し手は、読み手が読んだ箇所を確認しながら校正紙を消し込みます。

最後に見直しするための印を残します。
読み手も読み飛ばしがないよう、原稿にチェックを入れてください。

この作業を繰り返して進めていきます。

読み合わせ校正のポイント

赤字を入れるときは二人で確認する

消し手が赤字を入れたときは必ず二人で確認しましょう。
消し手の思い込みで赤字を入れることがあるからです。

赤字を入れたら、

  • 消し手が赤字を読み上げ、読み手は原稿と一致しているか確認する
  • 消し手が原稿をみながら赤字を入れて、読み手は隣で確認する

などの方法で進めましょう。

読み合わせ校正
赤字を入れた時はニ人で確認

このとき、読み手は消し手の利き手と反対側に座るのがオススメです。
消し手が赤字を入れるときに確認しやすくなるためです。

読み手は伝わるように読む

読み手が原稿を読むときは「正しく読む」のではなく、「伝わるように読む」ように心がけます。

例えば・・・

●不二家
×ふじや    〇ふじいえ
家の「や」を屋根の『屋』と勘違いしてしまうことがあるので、あえて「いえ」と読みます。

●髙島屋
「たかしまや」と読んだ後に、「髙ははしごだか、屋は屋根のや」と伝えるようにします。
髙には『高』と『髙』の異なる字形があるからです。

●齋藤
『さい』には『斉』『斎』『齊』『齋』の4つの漢字があります。
「さいとう」と読んだ後に、旧字体の『齋』であることを、原稿を見せて確認します。

視覚だけを使った突き合わせ校正に対して、聴覚を使った読み合わせ校正の唯一の弱点が、同訓異字や同音異字、同音異義語の判別です。

ですが、このように読み手が気を使って読み方を変えたり、原稿を見せたりと工夫をすることで、該当箇所への気付きを最大化させることもできるのです。

最後は必ず見直しする

突き合わせ校正同様、確認モレがないか、校正紙と原稿の両方を見直します。

あおり校正

人間の目の錯覚を利用したチェック方法です。

これができれば、難易度が高いと言われている某ファミレスの間違い探しも簡単に全問正解できます。

初校(最初に原稿から作成した紙面)以降は、基本的に初校に対して変更・訂正の赤入れを行い、制作者が修正していきます。この工程を何度か繰り返して校了に向かいます。

このとき入った赤字が正しく直っているかチェックするのはもちろんですが、それだけでは作業として十分とは言えません。

赤字を修正したことにより、赤字以外の箇所を間違えたり、レイアウトが崩れたり、といったことが頻繁に起きるからです(これを指定外変化といいます)。

そこで効果的な校正のやり方があおり校正( “パタパタ”や“めくり合わせ”と呼ばれることもあります)です。

あおり校正のやり方

①校正紙に入った赤字(クライアントの赤字や変更点の赤字)をチェックします。

赤字が直っていなければ話になりませんので慎重にチェックしてください。

②校正紙を重ねて繰り返しめくります。

赤字修正箇所以外で視覚的に一致しない箇所がないか目視で確認していきます。
その際、トンボを合わせるなどして、ズレないように注意しましょう。

あおり校正
パタパタとめくります

③紙面を頭の中でブロック化して、チェックを終えたブロックにマーカーなどで斜線を入れます。

そうすることで、どこまでやったのかがわかります。
特に写真や図表などが複雑にレイアウトされた紙面では、ブロックまるごとやり忘れて見落とすケースがあるので注意が必要です。

校正紙を重ねるときは、修正後を下、修正前(赤字の入った校正紙)を上にするのがオススメです。
修正後の校正紙をきれいな状態にしておけるので、入れた赤字が読みやすくなります。

あおり校正

あおり校正のポイント

突き合わせ校正と上手に併用する

あおり校正が効果的なのは修正前と修正後でレイアウトが大きく変わっていない場合に限られます。

レイアウトが大きく崩れているのに無理やりあおり校正を行うと、うまく目の錯覚を利用して不具合を発見することはできません。

あおりづらい箇所は無理にあおらず、突き合わせ校正をしっかりと行いましょう。

同一紙面のなかでも、あおり校正できる箇所とできない箇所があることが大半です。二つの校正方法を上手に併用することが重要です。

最後は必ず見直しする

これまで同様、確認モレがないか見直します。
このとき、赤字の周りを注意して見直しましょう。赤字周りは、間違いが発生する可能性が高い危険地帯です。
指定外変化が起きていないか、落ち着いて再確認します。

3種の校正 メリットとデメリット

紹介した3種の校正方法にもメリットとデメリットがあります。それぞれの特性を理解して上手に使い分けましょう。

校正手法メリットデメリット
突き合わせ校正・一人で作業が完結する
・大幅なレイアウト修正があっても作業に支障がない
・原稿と校正紙を、視線が行き来するので見間違いのリスクがある
読み合わせ校正・原稿と校正紙の各々に注力できるので集中力を保ちやすい
・2名作業なので、やり方次第でダブルチェックの効果がある
・二人同時刻での作業が必要
・同訓異字や同音異字、同音異義語に弱い
(やり方次第でメリット化も可能)
あおり校正・一人で作業が完結する
・一字一句読む必要がないので、時間をかけずに作業できる
・大幅な修正が入った場合は、突き合わせ校正も必要になり時間がかかる

3種の校正 使用シーン

どんなシーンで使い分けると効果的かまとめました。参考にしてください。

校正手法使用シーン
突き合わせ校正・同訓異字や同音異字、同音異義語が頻出する名簿など
・写真や図表などが多いフリーレイアウト紙面
読み合わせ校正・見間違いのリスクがある価格や商品番号リストなど
・情報量が多く、複数の視点でチェックしたいケース
あおり校正・原稿照合を終えた初校以降
・修正が落ち着いてきた校了間際 など

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素読み校正のやり方

続けて、校正紙だけを読み込んでミスを指摘する素読み校正を解説します。

素読み校正には、次の4つのチェック作業があります。

  • 常識チェック
  • 誤字脱字チェック
  • 表記ゆれチェック
  • ファクトチェック

ひとつずつコツを紹介します。

常識チェック

ダンクが素読み校正を行う際に、最も注力しているのが常識チェックです。

校正紙を読んで、常識の範囲で徹底的に矛盾や間違いを洗い出していく重要な作業です。

常識チェックは、以下の3つのポイントを意識します。

  • 日本語表現
    日本語の表現として違和感がないかチェック
  • 読者目線
    想定読者を意識して、読者目線で矛盾がないかチェック
  • 整合性
    同じ制作物の中で同一であるべき情報が、異なった内容・表現になっていないかチェック

ただ何となく読んでいるだけでは、これらのポイントに気がつくことはできません。

例えば、「読者目線」では次のような視点で指摘します。

ダンク印のお茶(2L) 1本140円 1箱(18本)2,160円

この商品情報におかしな点があります。どこか分かりますか?

答えは18本。

正解は

ダンク印のお茶(2L) 1本140円 1箱(6本)720円

などになるはずです。

18本の箱入りがあったら重くて運べません💧。

スーパーに買い物に行く主婦の目線で素読みすると、この点に気づくことができます。

読者の目線になって読んでみると、普通に素読みをしても気がつかない間違いを発見することができるのです。

このような事例を交えて、以下の記事で詳しく解説しています。
あわせて参考にしてください。

常識チェックのネタを中心に、校正の間違いを仕込んだ演習セットを用意しました。
普段から校正している方は、腕試し的に取り組んでみてはいかがでしょうか?

>演習問題 無料ダウンロード

誤字脱字チェック

どんなにわかりやすい制作物だったとしても、誤字脱字があっては信用を失ってしまいます。

誤字脱字をチェックするコツは「作業を分けて、ひとつひとつ読む」。

これにつきます。

人間は機械ではありませんので、一度に複数のことを行うと、必ずと言っていいほど何かが抜け落ちます。

作成したチラシや外部に依頼した制作物が出来上がると、みなさん自分で文章を読んでいると思います。
このとき、文章の意味合いのチェックと誤字脱字のチェックを同時に行っていませんか?

  • 意味合いのチェック
    意味の流れを追いつつ、内容が適切かどうか確認していくこと。
    このとき、頭の中は完全に意味内容に集中しましょう。誤字脱字に気を取られていると、意味の流れが分からなくなります。
  • 誤字脱字のチェック
    誤字脱字をチェックするときは、意味の流れを追わずに一文字ずつ見ていきます。

文章の意味合いと誤字脱字を同時にチェックすると、高い確率で誤字脱字を見落とします。

誤字脱字をチェックするときは、それだけに集中しましょう。

最善の策は「作業を分けて、ひとつひとつ読む」です。

同音異義語に気をつける

誤字脱字にいくら注意しても、なかなか間違いに気がつかないのが同音異義語です。

そもそも他の同音異義語があることを知らないと疑問にも思いません。

ある程度校正をこなしていくと、「ここは危険。あの字になってないかな?」と謎のレーダーが発動するようになりますが、これはあくまでプロの話。

同音異義語の間違いはいつでもおこりえる、と思ってチェックするように意識してください。

表記ゆれチェック

表記ゆれがあることで「なんか読みにくい」「なんか信用できない」、場合によっては「読者の誤解を招く」といった事態がおこります。

たかが表記ゆれと侮ってはいけません。

自分達は気がつかないところで、読者からの評価を下げている可能性があるのです。

送り仮名の有無や言い回しの違い、漢字表記かひらがな表記かなど、表記ゆれにもさまざまな種類があります。

いつの間にかこっそり存在している表記ゆれ。これをチェックする方法は大きく2つあります。

  • デジタルツールで表記ゆれをチェックする
    表記リストを用意してデジタルツールでチェック。確実で早い方法です。
  • 目視で表記ゆれをチェックする
    デジタルツールだけでは不十分。人間の目(目視)でチェックしてヌケモレを拾います。

デジタルか目視か、どちらかだけに頼ると、すべての表記ゆれを防ぐのは難しい。

ダンクがオススメしているのは、デジタルと目視のハイブリッド型です。

以下の記事では、デジタルツールと目視のチェックのコツを解説しています。
オススメのデジタルツールも紹介していますので、参考にしてください。

ファクトチェック

ファクトチェックは、とにかく時間がかかります。

数値や引用の根拠、歴史的事実や時系列、固有名詞、さらには日付や曜日、数字(消費税や割引率)などもチェック対象です。

掲載情報の根拠となるソースが用意されていればまだ楽ですが、ない場合は自分でソースを調べます。
とにかく、この調査に時間がかかる。

手間をかけずにファクトチェックを行うコツが以下の2点。

  • 掲載情報のソースは制作と同時に用意する
    自社の制作物を外部に委託している場合は、掲載情報の根拠となるソースも同時にピックアップしてもらいます
  • 一回の調査に時間をかけ過ぎない
    なかなかソースにたどり着けないときは、時間を空けて頭を切り替えて再調査してみましょう。意外と簡単にソースがヒットすることがあります

この2点を実行することで、作業効率は格段に上がります。

文章校正ツールでチェックする

ここまで素読み校正を目視でチェックする方法を中心に解説してきましたが、デジタルツール(文章校正ツール)を利用するのもひとつの手法です。

ただし、ダンクでは文章校正ツールは基本的に使っていません。

なぜなら、100%の指摘は難しいから。
(仕事として校正を請け負っている以上、「文章校正ツールが指摘してくれなかったので見落としました」とは言えませんので…)

ですが、AIの進歩も著しい昨今、文章校正ツールも無視はできません。

100%間違いを指摘するのは難易度が高いですが、使用目的を明確にすれば便利なツールになります。

ダンクが考えるオススメの使い方は、
「人の目でチェックして、その補助機能として文章校正ツールを使う」です。

以下の記事では、文章校正ツールをダンクが実際に使ってみた所感をレポートしています。
無料で、かつブラウザ上で手軽に使える文章校正ツールに特化したレポートです。
ツールの導入を考えている方には参考になると思います。

校正マニュアルダウンロード

校正指示の書き方(赤入れのコツ)

せっかく校正で間違いを見つけても、正しく直らなければ意味がありません。

校正は間違いを見つけて終わり、ではありません。
間違いを正しく修正して初めてゴールにたどり着きます。

そのためには、わかりやすい赤入れがかかせません。

ダンクの経験上、わかりやすい赤字指示をすると修正の精度は上がります。
これは間違いありません。

自分で修正まで担当しているのであれば、赤字指示はあまり関係ありませんが、制作担当が別にいる場合は、赤入れの基本を覚えておきましょう。

赤入れのコツ【校正指示の3要素】

ダンクでは「入社したスタッフに校正記号を学ばせる」ということをしません。
(校正記号は、主に雑誌や小説など文章中心の書籍校閲で使う記号です)

ダンクが扱うカタログやパンフレットなどの販促物の場合は、校正指示の3要素を意識して赤入れします。

  • 範囲指定
  • 引き出し線
  • 修正内容(伝わる言葉)
赤入れ 3要素

修正間違いや修正モレは、(例外的な場合もありますが)たいていの場合、この3要素のどれかが不明確なために発生します。

3要素を意識して、「100人が見たら100人が同じ判断をする」ように、わかりやすい赤字を書きます。

例えば、以下のような「範囲指定」では勘違いされる恐れがあります。

赤入れ 範囲指定

写真の入れ替えは明確ですが、それぞれの写真の下にある合番(①~④)は入れ替えるのでしょうか、そのまま残すのでしょうか。判断に迷いますよね?

範囲を指定するなら、はっきりと指定してあげましょう。

赤入れ 範囲指定

このように、赤入れは「シンプルにわかりやすく書く」を徹底します。

ここまで書けば、修正の勘違いやモレはだいぶ防げます。

決して難しいことではありません。
試してみてください。

ダブルチェックのやり方(校正の精度を上げる)

人間が作業する以上100%ミスをしない、ということはありえません。

1回の校正では不安という場合は、ダブルチェックを行うのも有効です。2回チェックすることで、ミスが発生する確率も下がります。

例えば、作業者1人の場合、0.1%(1,000分の1)の確率でミスが発生すると仮定します。
単純に2人に増やせば0.1%×0.1%=0.000001(1,000,000分の1)となり、理論上で言えば、極端にミスの確率は下がります。

これだけでもダブルチェックをする意味はありますが、あくまでこれは計算上のお話。

一人目が見落とした箇所を二人目も見落とす、ということは充分に起こりえます。
一人目と二人目が同じ見方をしていると同じワナにハマりやすい、というわけです。

そこで大事になるのが、目線を変えてダブルチェックを行うことです。

二人目は、一人目と視点を変えてチェックする

視点を変えるとは具体的にどうすればいいでしょうか。

例えば、以下のようなポイントで一人目と二人目の作業の視点を変えます。

  • 一人目:突き合わせ校正
  • 二人目:原稿の売価だけを突き合わせ校正
    (視点を重要な売価だけに絞る)
  • 一人目:あおり校正
  • 二人目:赤字のチェックだけを行う(あおり作業は省く)
    (視点を赤字の直しモレだけに絞る)

重要度が高いところや、リスクが高いところを二人目がチェックするようにします。
ポイントを押さえて作業することで、ミスの発生を減らすことができるのです。

同時に作業時間の短縮にもつながります。
作業の選択と集中を上手に行うことが大切です。

Q&A

ここでは、本記事に書ききれなかった点やポイントをQ&Aでまとめました。

校正者を目指していますが、校正向きの性格などはあるでしょうか?

「どんな人が校正に向いているか」を人の性格や趣向で答えるのはとても難しいです。
ですが、長年校正者の育成に関わった経験上、「校正に向いていない人」がいるのはわかります。
以下の記事で詳しく説明しています。

校正を外部に委託しようと考えていますが、どうやって依頼したらいいでしょうか?

校正を依頼する際は、自社の制作物のどこに不安要素(校正して欲しい内容)があるのかを明確にしましょう。それが校正作業の要件になり、作業期間と作業料金に直結します。
不安要素の考え方は、以下の記事でまとめています。

自社で制作しているのは製品カタログです。この記事で書いてある通りに校正すればミスは減るでしょうか?

校正のやり方自体は、本記事を参考にしてもらえれば問題ありません。
ですが、カタログにはカタログ特有の、チラシにはチラシ特有の注意するポイントがあります。
媒体特有のポイントを押さえて校正すると、精度が上がります。

まとめ

校正のやり方を網羅的に、マニアックに解説してきました。

校正には『校正』と『素読み校正』の2つがあります。

それぞれの特性を理解して、貴社の校正業務に取り入れてみてください。

校正と一口に言っても、この記事で解説してきたとおり、さまざまな手法やテクニックがあります。

細かいことを言い出すとまだまだあるのですが、プロの校正現場で必要な基礎知識は書き出したつもりです。

すべてを取り入れることは難しいかもしれませんが、

おっ、これ使えそう!

というものがあったら、どんどん取り入れてください!
きっと校正の精度が向上するはずです。

ダンクでは、さまざまなジャンルの校正・校閲を請け負っています。
制作物のミスでお困りの方は、ダンクの校正・校閲サービスをご利用ください。

\「まちがい」を無くしたい方へ/

この記事を書いた人

岡崎聡
岡崎聡株式会社ダンク 取締役相談役
フリーランスでの編集・カメラマンなどを経て、1994年に株式会社ダンク入社。校正、進行管理、営業対応などに携わる。
2008年10月~2023年5月まで株式会社ダンク取締役社長に従事。
2014年からは、宣伝会議の「校正・校閲力養成講座」講師を担当。
販促会議デジタルマガジンに「販促ツールの品質を高める 校正のチェックポイント」などを寄稿

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