【旅】横浜山手西洋館めぐり#02 山手111番館〈神奈川県横浜市〉
都会での忙しい毎日に疲れたら、ふらっと旅に出てリフレッシュしてみませんか?
シリーズ『町旅』は、そんなあなたを癒してくれたり、
改めて日本の魅力を再発見できる「ニッポンの旅」をご提案します。
外国人居留地の面影が残る神奈川県の横浜にある、趣深い「横浜山手西洋館」を巡るこのシリーズ。
現在コロナ禍ということもあり、館内での撮影は禁止なのですが、
この現地取材は2016年に行われたものなので、その内部もバッチリ撮影。
見どころも写真でたっぷりお伝えしています。お楽しみに♪
第2弾の今回は……
横浜市指定文化財にも指定されている『山手111番館』。
住所としては、「神奈川県横浜市中区山手町111」に位置します。
イギリス館の南側、噴水広場を挟んで立っている赤い瓦の屋根と白い壁が印象に残るスパニッシュスタイルの洋館が、『山手111番館』です。
大正15年、アメリカ人の両替商J・E・ラフィンの住宅として建築されました。
そして設計は、ベーリックホールも設計した建築家、アメリカ人のJ.H.モーガンによるものです。
どちらも玄関前に3連アーチの同じ意匠が見られますが、こちらは天井ではなくパーゴラ(つたや植物を絡ませて作る棚)であるため、とりわけ新緑の季節などには印象が異なってきます。地階はコンクリート、地上が木造2階建ての寄棟作りの建築です。
では建物の中に入りましょう。
まず最初に四角く開放感のある吹き抜けのホールに出ます。
2階には回廊がぐるっと一周巡らされています(残念ながら老朽化のため一般の方は現在は入れません)。
向かって正面のところには年代物の重厚な木製マントルピースとタイル貼りの暖炉があり、よく見ると暖炉の上の置時計を中心に部屋がシンメトリーの構造になっていることに気づきます。正面の外観も同じく左右対称なので、設計コンセプトにも関連していそうです。
見上げるとうっとりするほど美しいシャンデリアが目に入ります。
モーガンの作品は「穏健で華麗な欧米風の建築様式」と表現されますが、このホールにも当てはまり、「言い得て妙」とうなづきました。
あたたか味のある華麗さ、と言い換えてもいいかもしれません。
ホールの奥はダイニングルームです。
壁を覆う羽目板、天井に張りめぐらされた太い格子、ホールと背中合わせに配置された天井までの高さの重厚な仕立ての暖炉とが合わさって、落ち着いてどっしりとした威容ある佇まいになっています。
続いてのバスルームは、
古い映画に出てきそうなヌーヴェルバーグ風(?)のおしゃれな雰囲気でした。
ここだけはなんとなく(?)スパニッシュスタイルというよりは、フレンチスタイルを感じさせます。
いまにも影から美しい女優さんが登場しそうな雰囲気でした。
邸内の照明は、どれもがほんとうに素晴らしいので、ひとつひとつに、つい見入ってしまいます。
そして、インテリアショップでもなかなか見ることのできない、かわいすぎるペンダントライトを発見!
似たような照明は現在にもありますが、それらが「レプリカ」に見えてしまうほど、その質感はもはや別次元。
比べ物にならないくらい上品なのが、写真からもわかるでしょうか?
色味の加減も光のやわらかさも、よりなめらかで上質な感じですね。
建物は傾斜地を利用して建てられているので正面からは2階建に見えますが、背後へ廻ると地階が現れて3階建に変わるのが一見「だまし絵」のようです。
創建当時は地階部分にガレージや使用人部屋を配していたそうですが、いまはテラスが設けられ、バラの季節には正面の「ローズガーデン」が一望できます。
また現在、地階ではカフェ『えの木てい』も営業しているので、初夏にバラの咲き乱れる庭を眺めながら、お茶を飲んでゆっくり過ごすのもいいかもしれませんね。
庭に設けられたパティオも素敵です。
建物正面から裏手に通じる庭の側面の小道にも、パティオが。
現在は使われていないようですが、おそらく当時は噴水(獅子の口から水が湧き出て、下に流れ落ちるタイプ)として使用されていたのであろう「名残り」がうっすらと見受けられます。
こちらは石造りの獅子のレリーフのアップ。風格と味わいがありますね。
古い建築が好きな人には、時代を経たレンガの風合いもまた魅力のようです。
同じく歳月を経た木製の緑のドアと石壁。
石壁のパテでつけられたアクセントの上に木立が陰影を落とす様子は、日本ではなくどこか遠い外国の避暑地のようです。
旧ラフィン邸の敷地から立ち去る間際にうしろを振り返ると、そこにも美しい景観が見えました。
次回は「山手234番館」を訪れます。どうぞお楽しみに。
(編集部注※この現地取材は2016年に行われました)
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